こんにちは。熊本県熊本市にある関歯科医院です。
「インプラント治療後は虫歯にならないから安心」と思っている方がいるのではないでしょうか。
インプラントは歯を補う治療方法の一つです。天然の歯のような見た目や噛み心地を再現できることから人気の治療法ですが、治療後は「インプラント周囲炎」と呼ばれる口内トラブルが起こる可能性があります。
一度インプラント周囲炎になると症状の進行は早く、歯茎を切開するような外科的治療が必要になることもあります。
今回は、インプラント周囲炎になるとどのような症状が出るのか解説します。インプラント周囲炎の原因や予防方法についても解説しますので、インプラントを検討されている方やインプラント治療中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
インプラント周囲炎とは?
「インプラント周囲炎」とはインプラントの周囲の歯茎や骨に炎症が起こる疾患です。天然の歯に起こる「歯周病」と同様で、細菌感染が原因で起こります。痛みなどの自覚症状が起こりにくいため、気付いた時にはかなり重症化していることもあるでしょう。
「インプラントは人工物のため、虫歯などの病気にならないのでは?」と感じる方がいるかもしれません。
インプラントは顎の骨に埋入するインプラント体と連結部品のアバットメント、歯の代わりとなる人工歯の3つのパーツから構成されています。インプラントは人工物のため、天然の歯とは異なり虫歯になることはありません。
ただし、口内が不衛生になると細菌が繁殖します。歯周病の原因となる菌が人工物であるインプラント自体を溶かすことはありませんが、インプラント周囲炎のように周りの歯茎や骨などの周辺組織が病気になる可能性は十分にあるのです。
インプラント周囲炎の症状
インプラント周囲炎の症状は進行度によって異なります。インプラント周囲炎になっても初期の段階ではほとんど気付くことができないといわれています。
ただし、症状が進むと細菌が「サイトカイン」と呼ばれる毒素を出して炎症反応を起こすため、やがて歯槽骨が破壊されます。最悪のケースではインプラントを支えきれなくなることもあるでしょう。
インプラント周囲炎の進行度別の症状を以下の表にまとめました。
<インプラント周囲炎の進行度別の症状>
進行度 | 症状 |
---|---|
インプラント周囲粘膜炎 | ・インプラント周囲の歯茎上部の粘膜に炎症が起こり、腫れることや歯磨き時に出血することがある ・痛みはほとんどない |
軽度のインプラント周囲炎 | ・インプラント周囲の歯茎の腫れが大きくなり、歯槽骨が徐々に溶け始める ・歯茎を押すと痛みを感じることがある |
中程度のインプラント周囲炎 | ・インプラント周囲の歯茎が下がりはじめる ・口臭が発生する ・歯槽骨が半分程度溶けた状態で、出血や膿、痛みなどの症状が出始める |
重度のインプラント周囲炎 | ・人工歯の下部やアバットメントが露出したり、インプラント自体が大きく揺れたりすることがある ・噛むと痛みを感じたり、インプラントが自然に抜けたりすることがある |
インプラント周囲炎の特徴は一度発症すると進行が早いことです。その理由はインプラントの構造にあります。インプラントは人工物のため、天然の歯に存在する「歯根膜」と呼ばれる部分がありません。
歯根膜は歯の根っこの周りを覆っているコラーゲンのような膜で、歯に加わった衝撃が直接骨に伝わらないようにクッションの役割や、細菌の侵入を防ぐバリアのような役目を果たしています。
そのため、歯根膜がないインプラントは、細菌に感染すると一気に進行する可能性が高いのです。
インプラント周囲炎になる原因
インプラント周囲炎になる原因には、以下のようなものがあります。
- 口内に汚れが残っている
- 歯周病の治療をしないでインプラント治療を受けた
- 喫煙している
それぞれ詳しく解説します。
口内に汚れが残っている
インプラント周囲炎になる原因のひとつは、口内に残っている歯垢などの汚れです。歯垢には多くの歯周病菌が潜んでいます。
「インプラントは虫歯にならないから大丈夫」といって歯磨きを怠ると、細菌が増えやすくなり、インプラント周囲炎になるリスクが高まります。
歯周病の治療をしないでインプラント治療を受けた
歯周病になっているにも関わらず、治療をせずにインプラント治療を受けた場合も、インプラント周囲炎になるリスクを高めます。歯周病を患うと、それだけ口内に細菌が多くある状態のため、その分インプラント周囲炎になる可能性が高くなるのです。
喫煙している
喫煙もインプラント周囲炎を発症する原因のひとつです。喫煙すると血流が悪くなります。血流が悪くなると免疫力が低下し、細菌感染しやすくなるのです。
インプラント周囲炎が及ぼす悪影響
インプラント周囲炎になると、腫れや痛み、出血などが症状として現れます。最悪のケースではせっかく入れたインプラントが抜け落ちることもあります。
インプラント周囲炎を放置すると症状が進行し、インプラントがぐらつくことで噛み合わせが変化して周りの歯へ負担がかかるなどの影響が出ることもあるでしょう。
インプラント周囲炎を治療する方法
インプラント周囲炎の治療方法は、症状に合わせて「非外科的治療」と「外科的治療」に分けられます。
それぞれについて以下に詳しく解説します。
非外科的治療
軽度のインプラント周囲炎であれば、以下のような非外科的治療を行います。
- インプラント周囲の掃除
- 薬剤を使った洗浄
- 抗生物質の投与
- ブラッシング指導
軽度であれば、歯周ポケットに溜まった歯石を取り除くだけで治療が終わることもあります。症状が進行していれば、薬剤を歯周ポケットに入れて細菌を減らしたり、炎症を抑えるための抗生物質を投与したりします。
インプラント周囲炎になっているということは、自宅でのブラッシングがうまくできていない可能性が高いです。そのため、正しい歯の磨き方の指導を受けることもあります。
外科的治療
症状が重度になり骨が溶かされている範囲が広ければ、外科的治療を行う可能性が高いです。
歯茎を切開してインプラント本体を露出させ、薬剤を使ってインプラント体の表面を消毒したり、炎症箇所を切除したりします。これでも改善が見られない時には、インプラントを除去する必要があるでしょう。
インプラント周囲炎を予防する方法
インプラント周囲炎になると、気づかない間に症状が進行し、重症化すればするほど治療も外科手術を必要とするような大がかりなものになります。そのため、インプラント治療後はインプラント周囲炎にならないようにしっかり予防することが重要です。
インプラント周囲炎を予防する方法には、主に以下のようなものがあります。
- 口内を清潔に保つ
- 喫煙習慣を見直す
- 定期的にメンテナンスを受ける
一つずつくわしく解説します。
口内を清潔に保つ
インプラント周囲炎になる大きな原因は「歯垢」に含まれる細菌です。口内に汚れが残っている状態はインプラント周囲炎のリスクを高めるため、毎日の歯磨きが非常に重要です。
食後は歯磨きをする習慣を身につけましょう。すぐに歯磨きができない場合には、水で口をすすぐだけでもある程度の汚れを落とせます。
また、歯垢は歯と歯の間や歯と歯茎の境目に残りやすいため、ワンタフトブラシのような先の細い歯ブラシや、歯間ブラシを使うのも良いでしょう。
喫煙習慣を見直す
上述のとおり、喫煙もインプラント周囲炎を引き起こす原因のひとつです。タバコに含まれる成分によって血流が悪くなると免疫力が低下して細菌が繁殖しやすくなります。喫煙習慣がある方は、禁煙したり本数を減らしたりする必要があるでしょう。
定期的にメンテナンスを受ける
インプラント周囲炎の初期段階では自覚症状がないことが多く、気づかないうちに症状が進行していたということも少なくありません。定期的にメンテナンスを受けていれば、インプラント周囲炎になったとしても早期発見・早期治療につながります。
インプラント周囲炎になっていたとしても、早期に発見できれば、大がかりな処置は必要なく、インプラント周囲の掃除だけで終わる可能性が高いです。精神的・経済的な負担を減らせるでしょう。
定期メンテナンスでは口内全体に異常がないかの確認はもちろん、お口のクリーニングも行います。セルフケアだけでは落としきれない汚れを徹底的に落とすことができるため、インプラント周囲炎の予防につながるでしょう。
まとめ
今回は、インプラント周囲炎とはどのような疾患なのか詳しく解説しました。
インプラントは虫歯にならないからといって口内のケアを怠ることは危険です。インプラントは虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎になるリスクがあります。
インプラント周囲炎になると痛みや腫れなどの症状から始まり、重症化すると歯茎の中のインプラントが露出したり、歯を支える骨が溶けたりする恐れがあります。進行すると歯茎を切開するなど大がかりな治療が必要になる場合もあるでしょう。
インプラント治療後は、毎日しっかりと歯磨きをして口の中を清潔に保ち、定期的にメンテナンスを受けましょう。
インプラントを検討されている方は、熊本県熊本市にある関歯科医院にお気軽にご相談ください。